あいますにあいます

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2010年 03月 13日

1時間SS書きました。

お久し振りです。小六です。

一枚絵で書いてみM@STERから2週間弱。待っておりました1時間SS会!
お題は「幻想」または「ロマン」だそうです。
以下、SSとなります。





    ―――――――――――――――――――――――――――――――


 その日は事務所でのお仕事でした。
 ミーティング?そんなっ!そんなキラキラとしたことなんて私したことありません!
 私の仕事は事務所の窓ふき。


   バケツを両手に頭を垂れて
   汚れた木綿の雑巾で
   ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん


 そんなある日のことでした。




   ―――― ファンタジア ――――




 その日は応接室の窓を拭くように言われていました。

 アイドルの卵という名の体のいい使い走りと周りのみんなに言われます。
 だけど、そんなことは気にしていられません。
 生活がかかっています。窓を拭いた分だけお金がもらえます。窓がピカピカになっちゃいます!
 それだけで私の心もぴっかぴか。自分が働いている場所が綺麗になるのはとても気持ちいいです。


   だけど、ちょっとだけ
   ううん。たぶんかなり

   ちょっとだけでもいいから、アイドルらしいこと、やってみたいかなーって。


 そんなある日のことでした。


 私はたぷたぷと水の入ったバケツを床に置いて、これからどの窓を拭こうかと考えていました。
 そこで、ふと応接室のテーブルに目が吸い寄せられました。テーブルの上にはキラキラピカピカとした衣装。
 ごくりと息を飲みました。こんな服、私が持っているお金じゃ到底買えそうにありません。
 これがアイドルと呼ばれる人が着る衣装なのかぁ…と思わず見惚れてしまいました。
 でもでもでも!私はアイドル候補生です!これは私が着るための服ではありません!


   だけど、ちょっとだけ
   ううん。たぶんかなり

   ちょっとだけでもいいから、アイドルらしい服、着てみたいかなーって。


 「おもいたったがきちじつ」というお父さんの言葉を思い出しました。
 そう、ちょっとだけなら、見つかってしまう前に戻してしまえば、大丈夫。
 私はそそくさと人のいない応接室でキラキラピカピカとした衣装を着ることにしました。たいむいずまねー

 その衣装は偶然にも私の身体にぴったりと合っていて、なんかそれだけでアイドルになった気分です。
 私がアイドルになったらこういう服を着るのかなぁ…そう思うとなんだか嬉しくて、持ってきたモップを片手に私は見よう見まねでアイドルごっこを始めました。


「みんなー!来てくれて本当にありがとー!!」
「「まってました→」」

 私は誰もが羨むアイドル。ステップを踏めばお客さんは声援を上げてくれて、歌を歌えばお客さんはそれに合わせて歌ってくれる。

「これから歌います曲はー」
「「ちょ→たのしみ→」」

 テーブルで作った即席のステージの下、小さな双子が私の声に応じてくれます。
 ……応じてくれます?

「「ね→ちゃん早く早く! もー待ちくたびれちゃったよー!」」
「えええ?!」

 そうです。私は誰もが羨むアイドル…候補生のはずなのです。
 いつのまに夢が現実になってしまったのでしょうか?もしかしてこの衣装は魔法の衣装?

「「ほらほらねーちゃん!歌ってくれないならブーイングしちゃうぞ→ ぶーぶー!」」
「あわわ、ちょっと待って!私実は……」
「お?君が新しくデビューする子か。いいねぇ…ティンと来たよ!」
「ふええええ?!」

 突然現れた真っ黒な男の人に「それじゃあ挨拶回りに行こうか」とかなんとか言いくるめられ、私は今、車の中。
 両隣には何故かさっきお客さんをしていた双子が座っていて、楽しそうにお話している。
 ぎょーかいようご?だったかな、そういう難しい言葉が私の前に行ったり来たり。私は思わず頭を抱えてしまいました。


   すみませーん!実は私、アイドルじゃないんです!!ごめんなさーい!!


 なんて言えるはずもなく、結局言い出せないまま着いたそこはスタジオと呼ばれるところ。

 黒い男の人が言うには、ここでデビューライブのリハーサルをするそうで。
 あれよあれよという間に人と機材が行き交って、気付けば私はステージの上。
 もう後戻りはできない。こーなったらなるようになっちゃえ!私は腹をくくりました。


 ステージの上にいくつものスポットライトが輝いています。本当に夢みたいです。
 もしかすると、本当に夢なのかもしれない。私は光が欲しいと思うところに視線を向け、指を鳴らしました。


   ぱちん!


 するとどうでしょう。その場所に私が思っていた方向に綺麗な光がついたんです!
 これは夢だ、夢じゃなければこんなことできません!
 私はもう一度指を鳴らしました。


   ぱちん!

 
 夢でも嬉しかった。こんなにリアルに私がアイドルをしている夢なんて、見たことなかったから。
 それがとてもうれしくて、私はくるくる回るスポットライトの動きに合わせて、足の向くまま踊りました。心の向くまま歌いました。ああこれが夢なら、覚めないでいて下さい。そう思いながら指をならそうと


   ばたん!


 急に開けられたドア。そこには私と同じ背丈くらいの女の子が立っていました。
 逆光を浴びて立つその姿は、とても綺麗で、堂々としていて、まるでアイドルでした。いや、本当のアイドルでした。
 ステージの下にいる人達が騒ぎ始めます。


    あぁ、夢は終わってしまったんだ


 これが私の夢の終わりです。







「……そんな昔の夢、今頃見るなんておかしいわね」
「うん、本当に。まるで昔の私がいるみたいだった」
「あんときは本当にビックリしたんだから。デビュー決まってさぁリハーサルだってときに肝心の衣装がなくなってるんだから」
「ごめんね、伊織ちゃん。ついつい出来心で」
「あぁもういいって。過ぎたことなんだし、気にしてなんかないわ」

 早口でまくしたててから、伊織ちゃんは大きくため息をつく。
 怒ってるのかな、そう思ってこっそり横顔を伺うと、何か懐かしいことを思い返して笑っているみたいで、ちょっと安心した。

「ねぇ、伊織ちゃん」
「何よ」
「あの時の思い出。私はずっと覚えてるよ。伊織ちゃんと初めて会って、私が初めてプロデューサーの目についた日のこと」
「そりゃあんなことがあれば誰だって覚えてるわよ」

 私は車の窓を眺める。もうすぐあの頃使っていたステージ会場に着くころだと思う。

「ねぇ、伊織ちゃん」
「だから何よ」
「あの時はありがとう」

 私がそう言うと、伊織ちゃんは私から視線を逸らしながら呟いた。

「あの日は、きっと魔法使いがアンタに魔法をかけたのよ」








 


  おしまい
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by 6showu | 2010-03-13 02:53 | SS


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