あいますにあいます

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2010年 02月 07日

1時間SS書きました。

お久し振りです。小六です。やったね小六さん、1時間SSだよ!

お題は「オフ」
オフ会にするのはあまりにもけまらしいので、「オフ」→「オフライン」という発想で書いてみました。
オフラインとは、「映像制作の現場で、作品の構成や長さ(尺)を決定するための、仮編集」を意味するそうです。
へー、へー、へー。


以下、SSとなります







「一体どうしろってのよ…」

私はパソコンの画面の前で苦悩の声を洩らした。

「一体どうしたのよ、律子」

私の様子に気付いたのか、近くのソファに座っていた伊織は私に声をかける。

「ちょっと色々とね…」
「ふぅん。よかったらこの超絶天才美少女伊織ちゃんが相談に乗ってあげてもいいわよ」



  ―――― オフライン ――――


 伊織はソファに座って雑誌を読んでいる。きっとこの王女様にとって、私の苦悩などパンの耳程にもない悩みなのだろう。それでも自分の憤りを聞いてもらえるのはこちらにとっても助かる。すっかりぬるくなったコーヒーを飲みながら私は伊織に話した。

「このPVには臨場感がない」
「そりゃライブじゃないから仕方ないと思うわ」

 紋切り型の回答。私は天井を見上げて息を洩らす。雑誌をパラパラとめくる音が聞こえた。

「それをどうにかするのが私の仕事なのよ」
「仕事なら臨場感を出せばいいじゃない」
「その出し方が分かれば悩んだりしないから」

「ああそう」

 そう言って伊織はソファから立ち上がり、部屋から去った。去り際に「せいぜい頑張りなさい」と肩を叩かれたのは何かの励ましだったのか、それとも何かの揶揄だったのか、下賤な民の私には分からない。
 伊織が去って静かになる室内。私はパソコンの画面に映る文章をもう一度睨みつける。


   臨場感って何?


 その自問自答に答えは出てこない。出口のない思考に嫌気が差して、私は窓の外を眺めた。
 窓の外からはリアルタイムで時が流れていた。道路を歩く人達、行き交う車、のんびりと風に遊ぶ雲。まるでリアルタイムビューだ。765プロ、とある日の風景とかそんな項目をホームページにでも作ってみようか。ああどうでもいい。
 そうこうしている間にも時間は過ぎていく。それがどうしようもなく歯がゆい。こんなよく分からない注文、さっさと片付けてしまいたい。ひときわ大きなため息をついたとき、ガチャリと扉が開く音がした。

「まだ悩んでるの?」
「悩み続ければいいってものじゃないんだけどね」
「困った性分ね」
「まったく」


  そうそう、ちょっと気が向いたから、この伊織ちゃんがギターを弾いてあげるわ


 どこから持ってきたのだろう、古びたアコースティックギター。
 伊織のイメージとは程遠い楽器に私は思わず眉を潜めた。

「伊織…あなたギターなんて弾けたっけ」
「初めてよ。ヴァイオリンはやったことがあるけれど、ギターは初めて。けどまぁ何とかなるでしょ」

 
   私がギターを弾くんじゃないの、ギターが私のために音を出してくれるのよ


 何とも伊織らしい言葉だ。伊織はソファに座り、ギターを弾き始めた。
 ぎこちない旋律。ぶれる音。楽器を本格的に扱ったことのない私からしても伊織の演奏は初心者そのものだ。

「完成されたものが人の心を惹くとは限らないのよ」

 伊織の右手はコードを変える。おそらく適当に、伊織が好ましいと思える場所に指を置いているのだろう。
 びぃん、と変な音が出る。伊織は「そうじゃないってば」とギターに向かってひとりごちる。

「春香はライブじゃこけてばっかりだし、雪歩は変に暴走しちゃうし、私だって下僕達のために勝手にアドリブを入れたりするわ」


   だけど、それがいいんじゃない?


 優しい瞳はギターの弦に注ぎ込まれる。きゅっと握り締めたコードから出された音は、とても柔らかな音。その音を聞いた伊織は、「いい音ね、下僕第100000001号に認定してあげる」とギターに向かって微笑んだ。


「もっと気楽に、わがままに、そういうことじゃない?」
「…そうかもしれないわね」


 仕事終わりの時間を時計が告げる。きっと窓の外の風景には仕事を終えた人の姿が増えることだろう。
 私はパソコンのメール画面を閉じて、背もたれに背を預けた。

「今日の仕事はもうおしまいかもしれないけれど、どうするの?」
「うーん、もうちょっと頑張ってみたいから頑張るわ」
「そう」
「伊織は帰らないの?」

 私の問いかけに伊織はニシシと悪戯っぽく笑う。


    アンタが帰らないなら、とことん付き合ってあげるわ


 私はその言葉を受けて苦笑する。


    まるでわがままな野良猫のような、それでいて高貴なチェシャ猫のような
    勝手に人の部屋に入り込んできて、勝手気ままに遊んで帰る。こんなヤツ
    不思議だけれど、嫌にならない
 

 この仕事が終わったら、「自分勝手な王女様のために」と製作後記に付け加えてやろう。

 そんな夕暮れ間近のお話。








おしまい
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by 6showu | 2010-02-07 00:05 | SS


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