あいますにあいます

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2010年 01月 27日

たかはるSS書きました

お久し振りです。小六です。
最近はパソコンに三行半突きつけられたり、リアルさん(園児設定)に詰め寄られたりしていますが、
まぁ楽しくすごしております。

さて、1月21日は四条貴音さんの誕生日でした。この場を借りてお誕生日おめでとうございます。
というわけで、たかはるSSです。
貴音さんの性格マジで難しいです・・・なにやつ!!

以下、SSとなります。







 ドアが開くと外はすっかり夜で、冷え切った冬の空気に思わず私は身震いをしてしまった。


「うぅー。寒いですね…」
「冬は寒いものです。天海春香」
「そうはいってもですね……」

 ぴしゃりと言い放たれる言葉に反論できるはずもなく、私はコートの襟に顔を埋めるようにして息を吐く。白い煙となった息は、マフラーの中から抜け出していった。
 道路を行き交う車は昼と比べればぐっと少なくて、街はひっそりと静まり返っていた。雨が静かにアスファルトを叩いている。どうせなら雨じゃなくて雪だったらよかったのに。
 遠くの空から車が走る音が聞こえた。


「何はともあれ、誕生日おめでとうございます」
「はい。ありがとうございます」


 私の隣で歩く貴音さんは、落ち着いた物腰でそう答えた。その表情はどこか嬉しそうで、だけど寂しそうに見える。これが大人の雰囲気ってやつなのかなぁ、たった一つしか年が違わないのにこの雰囲気の差だ。何が違うのだろうか。
 頭の隅っこでそんなことを考えながら夜道を歩く。遠くから強い風が吹き込んできて、その寒さに身体が縮こまってしまう。隣に視線を遣ると、貴音さんはぼうっと空を眺めていて。不思議に思った私も視線の先を追ってみる。



    月



 薄くのっぺりとした雲に覆われて、間接照明のようにぼんやりと光っている。
 地元の夜空と比べるべくもないけれど、それでも確かに月は夜空を優しく照らしていた。


「……貴音さん?」


 隣に佇む彼女は物憂げな表情で、月の光と戯れているように見えた。




   ―――― 三笠の山に ――――




「…失礼しました。少し考え事をしていたもので」

 心此処にあらずといった感じで空を眺めていた貴音さんは、私の声でようやく我に返った。
 貴音さんの誕生日ということで某ホテルにてバースデーライブが行われ、私達はその帰途についていた。


「あ、いや。ただ呼んでみただけですよ」
「それならよいのですが……」


 思い返してみると、ライブ中も貴音さんはたまに窓の外を眺めては何やら考え事をしていることが多かった気がする。まさか幽霊でもないだろうし、空の上に想い人がいるわけでもないだろうし。ウサギのような赤い目でいったい何を見て、何を考えていたのだろう。私には分からない。

 小雨に濡れた道路を歩きながら、会話をぽつぽつと交わす。なんとなく気まずい空気。だからといって言い出すべき言葉も見つからず、私と貴音さんは足に任せて舗道を歩く。


「…何か気にかかることでもあったんですか?」
「いえ……」


 貴音さんは再び月を見上げた。月に照らされる銀髪、ときおり映りこむ横顔。
 整った顔立ちのせいもあるのだろうか、いつか貴音さんは私がいる場所から遠くへ行ってしまうような気がして。
 そんな気持ちで胸が締め付けられて、彼女のコートを掴んだ。背後に伸びていた影が止まる。


「どうかしましたか?」

 どうかしたかと問われると、たぶんどうかしてる。だけど言葉にならない。もやもやとした感覚が喉に詰まって苦しい。気の利いた言葉の一つでも言えればいいのだけれど、そんなに賢くもない私は自分の掴んだコートの裾を見つめることしかできなかった。
 雨が静かに降っている。黙りこくった私の手を、貴音さんは払いのけない。じっと私の言葉を待っているようだった。






   ぐぅ
 

 気の利いた言葉の一つでも言えればいいのだけれど、そんなに賢くもない私はただ顔を赤くしてコートの裾を見つめることしかできなかった。いくら胸がいっぱいだからと言って、お腹もいっぱいになるとは限らない。
 恥ずかしさで目が合わせられない。ああもう、なんでこんなときに限って。貴音さんの背中が微かに揺れていた。


「あのですね……」

 何とかしてこの場を取り繕うと、血が上った頭で必死に言葉をひねり出す。

「……何か一緒に食べません、か?」


 ぼそぼそと呟いた私の言葉に、貴音さんは困った顔をして頷いた。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆





    やっぱり冬はこれに限りますよねっ!



 天海春香は熱弁しながら茶色の紙袋から何かを取り出した。私は訝しげにそれを受け取る。
 掌にじんわりと温かい感触。


「これは……?」
「やだなぁ貴音さん。焼き芋ですよっ焼き芋っ!」


 銀紙を適当にはがして焼き芋とやらにかぶりつく。その顔はとても幸せそうで、そんなにおいしいものなのかと思って受け取ったものを見る。…焦げ臭い。色が汚い。趣の欠片も見つけられない。こんなもののどこがおいしそうなのだろうか。
 焼き芋なるものを訝しげに眺めていると、彼女は不思議そうな顔をして尋ねてくる。


「もしかして貴音さん、焼き芋食べたことないんですか?」
「えぇ、このようなものを口にしたことはありません」
「おいしいですよー」


 にこにこと笑う彼女は、自分のものを半分に割ってそれを私に手渡した。
 やわらかい断面から立ち昇る湯気、甘い匂いが鼻をくすぐる。ごくりと唾を飲み込むと、天海春香はしたり顔でこちらを見た。


「だまされたと思って」


 彼女の勧めを無碍にすることもできない私は、おずおずとそれを口にする。
 見た目よりも悪くない味だったことに驚く。


「これはなかなか…美味ですね…」
「くせになっちゃいますよー」

 白い息と湯気の境目が分からなくなる。見慣れぬ食べ物の色が、何となくよく眺めているものの形に似ている気がした。傘の端から流れた雨粒が顔に一滴零れ落ちる。それを見た彼女は自分の傘をたたんで私に話しかけた。


「貴音さん貴音さん」
「なんでしょう」


 彼女はそっと私の腕に擦り寄った。ふいに感じるやわらかさ。
 こうすれば温かいですよ、嬉しそうに私を見上げる姿はまるで雛鳥のようだった。
 雨はまだ降っているのに、空気はどんどん冷え込んでいくのに、何故か温かい。図らずも顔が綻んでしまう。


「こちらではこうするのが普通なのですか」
「んーどうでしょう。普通かもしれませんし、そうでないかもしれません」


「貴音さん貴音さん」
「まだ何か?」
「もっと気楽に。春香でいいですよ」


 へへっと笑う彼女の口元には食べカスがくっついていた。間抜けで幼い表情。
 春香は空いている方の手を広げて空に掲げる。親指と人差し指で軽く丸を作って何かを捉えているようだった。


「春香……」
「はい、何ですか」
「いったい何を見ているのですか?」


 私の問いかけに一瞬不思議そうな顔をしてから、「ナイショです」とその笑顔で答えをはぐらかした。
 雨はずっと降っている。月は雲に隠れてその輪郭がぼやけている。自分の感覚とうまく噛み合わないことばかり。だけど、私は月を見て泣きはらすことはないのかもしれない。

 時計の針が一日の終わりを告げる。


「貴音さん、誕生日おめでとうございます」

 隣で歩く彼女の言葉を受けて、私は笑う。
 紅潮した彼女の顔は、まるで昨日見た夕焼けのように美しかった。



















貴音さんの性格が難しくて、とっても面妖なSSになっちゃったんだぜ/(^о^)\
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by 6showu | 2010-01-27 02:10 | SS


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