2010年 01月 13日
お久し振りです。小六です。 2月の初めの試験の準備のため、1月中は更新速度が遅れるかもしれません。 ごめんね春香さん。不甲斐無い僕をお許し下さい。 というわけで、某エチャで話題になっていた黒響SS書きました。 響さんは明るいキャラなのですが、こういう暗い面があってもいいなと思って書いています。 ええ、つまりある意味キャラ改変です。公式なにそれおいしいの^q^です。 【追記】 なんと!みんな大好き真スキーの敬礼P様から素敵なイラストを頂きました!! イラストはSS中に挿絵として載せて頂いております!ひびまこサイコー!! 以下、SSとなります。そんな響さんが許せるという方のみどうぞ。 楽屋裏の人気のない一角。自分はいきおいアイツの身体を押し倒した。床についた手は薄く汚れていることだろう。 いつも自信たっぷりのアイツは、思いのほか怯えた顔をしている。不安に侵されてゆく瞳。その瞳に映る自分はぐにゃりと三日月のように口元を歪めていた。 「なんだよ」 「なんにもないさ」 虚勢を張るその声は少し震えていた。あぁ、これじゃまるで自分が悪者じゃないか。微かな罪悪感に思わず目を逸らす。自分はただ、オマエの瞳に自分だけを映して欲しいと思っているだけなのに。 「どうして」 どうしてもこうしてもない。自分にだって理由はよく分からない。もやもやとしたよく分からない感情が、最初は静かに積もっていって、気付けば両手から溢れ出してしまった。 ぽたり、ぽたりと押し倒した彼女の顔の隣に落ちる小さな水滴。 自分とオマエとアイツと。オマエはいつもアイツばかりを見上げていて、一番背が低い自分はその視界の中心には入らない。 手段なんて選んでいられなかった。許してくれなんて言わないし、謝るつもりもない。 「どうして?真が自分を見てくれないからさ」 これは宣戦布告なのだ ――― ブレイクアウト ――― 目の前では真と千早が楽しそうにおしゃべりをしている。自分はテーブルに頬杖をつきながら二人の会話を眺めていた。 真が春香のことを話題に出すと、千早は真っ赤な顔をして何かを弁解していた。本当に春香のことが気に入っているんだな。千早の言葉の揚げ足をとって真は楽しそうに笑う。何が面白いのかは今一つ理解できないけれど、とりあえず場に合わせて自分も笑った。 二人の話題はめまぐるしく変わって尽きることがない。 大して話してもいないのに、妙に口が寂しくなって自分は炭酸入りのジュースに口をつけた。ぱちぱちと弾ける炭酸の泡。 「それならいっそ誘っちゃえば?春香ならきっとよろこぶよ」 「…誘い方が分からないから困ってるのよ」 「いや、普通に『一緒にどう?』って言えばいいだけだと思うけれど」 千早はどうやらお気に入りのバンドのチケットを2枚手に入れたらしく、一人で行くなら春香も誘ってみたいのだがどうだろうかということらしい。多分春香のことだから、きっとよろこんで誘いに乗ると思うんだけどな。テーブルの真ん中に置いてあるお皿からお菓子をつまむ。 「結構人気のバンドなんだろ?せっかく2枚当たったなら、行くべきだと思うぞ」 お菓子の包装を開けて、ぽいっと口の中に放り込んだ。 「千早が好きなバンドなんだから、きっと春香も好きになるさ」 余ったお菓子をテーブル向かいの二人に差し出す。大袋のお菓子なんて一人で食べきれるもんじゃない。二人もお菓子を少しつまむ。話に夢中で喉が渇いていたのかもしれない。お菓子を食べた後、二人はふぅと息を吐いてからお茶を飲んだ。 「そうだといいのだけれど…」 「大丈夫だって。心配性すぎるんだよ、千早は」 「そうかもしれないけれど、やはり誘うのって慣れていないから」 そんなもんなのかなぁ、友達なんだから気軽に話しかけても良いもんだと思うけれど。 何となく気付いてはいたけれど、千早はこういった対人関係に関しては本当に臆病だ。普通に考えれば大したことない問題が、千早にとっては数学の難問みたいに不可解に思えるのかもしれない。 ふぅん、と自分は適当に相槌を打ちながらグラスに入ったストローをかき回す。 真と言えば、さながら人生相談のプロのようにうんうんと何か納得した様子で(たぶん真はこんなことで悩まないはずだが)、何かを思いついたらしくぽんと手を叩いた。 「そうだ千早、予行演習をすればいいんだよ」 「よこう、えんしゅう」 「そう、リハーサル。ほら千早、僕を春香だと思って、バーンと誘ってみてよ」 炭酸の中に沈んだ氷にひびが入る。 千早といえば冷たい視線を真に注いでいる。千早が真をライブに誘う、ねぇ。 笑いながら千早に話しかけるその姿が、何故か気に喰わなかった。嬉しそうな笑顔、それが自分以外の人間に向けられると胸の奥がちりちりと焦げ付いた。目の前の二人に気取られないようにグラスを持つ手に力を込める。顔は二人の良き友人のまま。 「千早も案外オクテなんだな。ちょっとびっくりしたぞ」 「響もそう思う?千早ってば春香のことになると本当にこんな感じなんだよ。そういえば昔ね」 「真……これ以上言ったら本当に怒るわよ」 「あはは、ごめんごめん」 本当に怒るとは言っても顔を見ればそれがただの照れ隠しだということ位は分かる。 こういう二人のやりとりを見ると、どうしても自分が余所者なのだということを痛感させられてしまう。自分がここに来るまでの過去の時間。それは巻き戻して修正することができないのだ。同じスピードで走っているならば、永遠に追いつくことのできない何か。 ぐっと歯を噛み締めて、自分は笑った。 「じゃあ試しに一度やってみるといい。自分がちゃんと出来ているか見ていてやるさー」 「さっすが響!話が分かってる」 「我那覇さんまで…もう……」 千早もようやく観念したようで、真を春香に見立てた予行演習なるものが始まった。テーブル越しに自分は二人の様子を見て、適当に笑いながら茶々を入れる。どれだけ背伸びをしたって、どれだけ真の名前を叫んだって、真は千早の方を見上げてばかり。 自分は視界の中心に入らない。 わかってるさ。この気持ちの名前位 名前を知っているからこそ、その気持ちを言葉したくない。形にしてしまうと、きっとそこから動かすことができないから。 グラスに入った氷をガリガリと喰い潰したい衝動に駆られる。 いつかその視線を奪ってやる ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 冷たい床に掌の熱が奪われてゆく。 我ながら幼稚な発想だったと思う。真に見上げてほしいから身体を押し倒すなんて。 「僕は響を見ているよ」 「そうだな。だけどそれじゃ足りないんだよ」 いつでも自分を見ていてほしい。むしろ、いつでも自分だけを見ていてほしい。せめて今だけでも自分の姿で真の視界を占領したかった。震える指先と揺れる瞳。まだ足りない。もっと、もっと、自分という存在を彼女の心に刻みつけたい。 「こんな響、響じゃない」 「だけど、自分は自分だよ」 短絡的な性格の自分としては頑張った方だと思う。 腹の底から黒い煙がぶすぶすと立ち上り、そのまま深く息を吐いた。 「真はさ、千早のことが好きなんだろ?」 腕の下にいる彼女の口がきゅっと引き結ばれた。相変わらず分かりやすい性格してるなぁ。 友達だったら茶化して済ませられるのだろうけれど、あいにく自分にはそれが出来ないから。 「千早も真のことが好きだけど、言い出してもらえない」 「だから、必死にアプローチして、千早が動き出すのを健気に待ってるのな」 「……そうだよ」 自分から視線を逸らしながら、ぼそりと自分の問い掛けに答える彼女。 ほら、また視界から自分を追い出したな。 いつもなら気付かないふりをするところだが、ここまで来てしまった手前、こちらも引き下がれない。整ったラインの顎に手をやり、ぐいと無理やり正面を向かせた。もう見てられないんだよ。叶いもしない恋に身を焦がすなんて馬鹿げてる。それならいっそ。 「なぁ真」 「なんだよ」 「自分じゃダメか?」 返答なんて待つ気はない。自分は真の顔に唇を近付ける。震える息がとても愛しい。 手段なんて選んでいられない。これは戦争なのだ 開戦の火蓋は、なんとも可愛らしい音で切って落とされた 本日 天気晴朗なれども 波高し もう僕のサイトの響さんは、公式とはかけ離れた別人な気がしないわけでもない。
by 6showu
| 2010-01-13 23:10
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