2009年 10月 10日

みきりつSS難しいですぅ

お久し振りです。小六です。

何を思ったのか、今までの自分のSSのデータを紙に印刷しました。
僕は原稿用紙なしでそのままメモ帳に一発書きする人間なので、文量が自然と増えてしまいます。

で、確認すると、処女作と比較して、倍近くの文量になっていたという。

何なの?いかがわしいのもないのに?バカなの?

今回はみきりつSSです。
「さん付け」というベタなテーマを僕なりに再解釈してみました。
友人以上親友未満という、こそばゆい関係性を表現するのは難しいですね。

それでは、以下SSとなります。




仕事から帰ってきて、タイムカードを入れる。
すると、トースターのパンの如く、
「Hoshi:17:30:out」の模様が印刷されたタイムカードがポンと飛び出てきた。

 うん、今日も上々なの。

芸能界という業界柄、定時には帰れないのはよくあることだが、自分に関してはそれは例外である。
早寝、遅起き、早帰り。そうでなきゃアイドルなんてやっていられない。
私はタイムカードの文字を満足げに眺めてから、タイムカードを横の棚に入れた。


タイムカードの棚を見ると、今現在仕事を終えて事務所に帰っていないのは春香だけだということが分かった。


デコちゃんと千早さんはお休みで、春香はまだ仕事中。
真クンと雪歩は午前中だけ仕事って言っていたから、たぶん二人で遊びに行っているのだろう。
隣の応接室からは亜美真美とやよいの声がする。おおかたゲームでもしてるんじゃないかな。


 春香のことだから、たぶん帰ってくるのは19時位になるんだろうな。

そんなとりとめもないことを考えながら、私は自分のタイムカードが入っている隣のカードを見た。



 「Akiduki:______:out」



だけど聞こえるパソコンのリズムの良いタイプ音。



 律子、まだ仕事しているんだ。

そう思った矢先、おなかの虫がぐぅーっと鳴いた。






◆ ◆ ◆ ◆ ◆







「ただいまー」
「あぁ、美希。お帰りなさい」

私の声を聞いた律子は、キーボードにあった両手の動きをいったん止めて、私の方を見た。

 普段よりも上手な化粧。

別に律子の化粧が下手というわけではない(確かに律子は化粧が苦手らしいけれど)
765プロのみんなは仕事柄、化粧はそこそこうまい。
しかし、やはりメイクさんがする化粧は自分達でするよりもはるかに上手いのだ。

「今日は仕事の帰り?」
「えぇ。最近忙しくなってきたし、小鳥さんだけでは追いつかないらしくって」
人気になるのも考えものね。 そう言って律子はぐるりと肩を回した。
「ふぅん」

 忙しいなら休めばいいのに。

そう思ったけれど、世話焼きな律子のことだ。
そんなことを言っても「でも止められないんだな」とか言ってはぐらかされるのがオチである。


 だから、この気持ちは心にしまっておいて、

「そうだ。何か飲み物持ってくるね」
「美希にしては気が利くじゃない」
「ミキにしては…って。これ位気を遣うよー。それで、何が飲みたい?」
「んー。そうね、じゃあコーヒーかな。ブラックで」
「ブラック…律子、おっさんだね…」
「おっさんいうな」
「あはは。うん、分かったの。じゃあコーヒー入れてくるね、ブラックで」


 律子が飲みたいというブラックコーヒーとやらを淹れてくることにした。





  ――――――――――――――――――――――――――――――――――




「はい、律子。熱いから気をつけてね」
「ありがと」


作業を中断した律子は、ブラックコーヒーの入ったマグカップを受け取る。
「そういえば、美希もコーヒーなのね」
「うん、だけどカフェオレだよ。おっさんじゃないもん」
「…あんた、ブラックコーヒーが好きな人にいつもそんなこと言ってるんじゃないでしょうね?」
「心では思ってるけど、口には出さないよ。律子だけ」
「あぁそう」
ため息をついた律子は、そのまま憮然とした表情でコーヒーを飲む。

「ブラックコーヒーが好きな人間として、その言葉は喧嘩を売っていると思うけれど」
律子はもう一杯コーヒーを口にする。ゆっくりと、その味を確かめるために。
「…事務所の中ではアンタの入れるコーヒーが一番美味しいから、怒るのは勘弁してあげる」
「これくらい朝飯前なの」
私は得意気に笑う。私が律子に対して、素直に思ったことを言える理由だ。

そして、朝飯前という言葉を聞いたのだろうか。先ほどなっていたお腹の虫が再び起き出した。ぐぅ。



「おなかすいた」
「もう夕方だし、お腹が空いてくる時間帯ね」




 ねぇ、りつこー。おにぎりいっしょにたべようよー。

   おにぎりなんてものは事務所にはありません。

 じゃあ、いっしょにコンビニいこうよー。

   おにぎり位自分一人で買いに行かんか。

 む、できるよそれくらい。

   それなら自分で作ってきなさい。

 りつこといっしょにコンビニいきたいのー。

   あーはいはい。じゃあこの仕事が終わってからね

 そんなのヤ。いまからがいいの。律子と一緒に今からおにぎりつくりたいの。

   …そういえば美希、アンタさっきから私のこと「律子」って呼び捨てにしてない?

 やだなぁ。そんなの律子、さんの気のせいだよ、気のせい。




  〈「さん」を付けなさい〉


それは律子が私と距離をとるときの言葉。
私が超えることのできない、律子との絶対的な境界線。

その言葉を言われると、私は律子と一線を引かざるを得なくなる。
そして彼女は自分の世界に閉じこもる。
律子のいる世界をもっと知りたいのに、その場所へ行かせようともしてくれない。

律子を捉えて離さない、律子の世界。
彼女は私よりも自分の世界を選ぶのだ。いつも。


それが すこし くやしくて
                そんな じぶんが イヤになる








 ねぇ、仲良くなりたい人の世界に嫉妬するって、変なのかな?






――――――――――――― 砂糖は小さじ一杯 ――――――――――――――






カタカタカタ


よどみなく流れるキーボードの音。



律子は相変わらずパソコンの前で仕事の残りをしている。
出来ることなら手伝ってあげたいけれど、勝手に触ると律子に怒られそうだからやめた。

私は手持無沙汰で、だから座っていた回転イスを回転させた。
 くるくる くるくる。
世界が回る。たったこれだけのことなのにね。
私と彼女の距離は全く変わらないけれど、目の前の景色はくるくるまわる。
 くるくる くるくる
私はそれが少し面白くなって、しばらくの間その遊びに興じた。
 くるくる くるくる

頭の中がぐるぐるになってきた頃、律子ははぁと深いため息をついた



「りつこ。どうしたの」
「どうしたの…って」
ようやく律子は顔をパソコンから私の方へ向ける。
「亜美や真美じゃないんだから、少しは静かにしてほしいものね」


「だって」
私は回転イスの背もたれを手すりがわりにして、ぐっと律子の方へ身体を近づける。
「つまらないんだもん」


カフェオレの入ったマグカップを机に置いて、律子のパソコンを覗き込む。
何やら良く分からない記号や数字が細長いマス目にずらっと並んでいるのを見て、少しげんなりした。
だけど、律子のやっている仕事が少し垣間見れて、ちょっと嬉しかったりもした。

「そんなに近づくな。暑苦しい」
「えー」

律子は私の身体を片手で押しやった。
無理強いすれば律子は諦めて受け入れてくれるのだろうけれど、それはそれでイヤだ。
だから私はそのまま律子の拒絶に従った。


だけど、それでも。やっぱり律子の傍にいたいから、何か律子の役に立ちそうなことをしたいから。


「ねぇ、りつこ。肩こってない?」
「肩?そうね、少しこってるかも」

 彼女と一瞬目が逢う。

その瞬間を逃したりはしない。私はその一瞬に自分の思いの丈をめいっぱい瞳の色で主張した。










「…美希。肩、もんでくれる?」
「もちろん!まかせてなの!」






◆ ◆ ◆ ◆ ◆






「お客さーん、こってますねー」

両手を組んで、たんたんと律子の肩を叩く。

「あーそこそこ。うん、きもちいいー」

「…律子、やっぱりオッサンくさいの」
「女同士なんだから、別に構わないでしょ」
「そりゃそうだけど」
「あ、次は左もお願いね」

  …前言撤回。オッサンじゃなくて、むしろオバサンなの。


ふと視線を机に向けると、机の隅に小説が置いてあるのが見えた。

「ねぇ、律子。その本何なの?」
「あ、ええと。小説よ、小説」
何の気なしに聞いてみると、律子は少し動揺した声色で自分の質問に答えた。


 自分の中にある、センサーみたいなものがピンと音を立てた。


「小説…かぁ。ねぇ、どんな内容なの?」
「そ、それは…」
いつもは勝ち気な感じの律子は、言葉につまった。
「れ、恋愛小説よ!高校生の!恋愛小説!これでいいでしょ!」

そういえば、律子は恋愛小説が好きで、恋愛というものに奥手だって聞いたことがある。

 そして、その一瞬を私が見逃すはずなんて、ありえない。



据え膳食わずばなんとやら。こうなったら強硬手段だ。
私はずいっと律子の背中越しから、その本へ手を伸ばした。

「あ、コラ!美希」
「それ位教えてもいーじゃない。律子のけちー、どけちー」
「やーめーなーさーいー」
「やーめーなーいーのー」

そんなこんなで軽く格闘した結果。


  ぺし


その本で頭を軽く叩かれた。


「…律子、そんなに怒るとシワが増えると思うよ」 私は頭を抱える。
「いらんお世話は結構。それに、そんなに強くは叩いていないはずだけど」

 むむ。ちょっとやりすぎたかな。

そう思ってちらりと視線をあげると、しょうがないなぁと言った感じで律子が笑っていた。
それを見て、私はほっとする。よかった、そんなに怒ってないのかな。

私は律子のこの笑顔が好きだ。冬の小春日和を思わせる、やさしい笑顔。
 心がぽかぽかして、ほっとする。見ているこちらも笑顔になる。


「えへへ」

「何よ、気持ち悪いわね」
「んー。律子ってやっぱり可愛いなぁって思っただけだよ」


私がそう言うと、律子は顔を真っ赤にして、再びため息をついた。


「…アンタって、ホントバカ」
「バカはひどいの。別に間違ったこといってないよ」


はあぁと、もう一つ深いため息。律子はさらにこめかみを押さえる。


「あーそうね、アンタはそういう子よね。私が悪かったわ」
「分かったならよろしい、なの。それでそれで、何読んでたの?律子」
「教えません」
「律子ずるいのー」
「そういえば気になってたんだけど、アンタ、さっきから私のこと、『さん』付けで読んでないわよね」
「そ、そんなことないよー。気のせいだと思うな、律子の「律子『さん』」」
「…律子、さんの」

今までとは一転、得意げな顔になる律子
「分かったならよろしい」


ほら、また使った。魔法の言葉。
私は、律子の世界からぽんっと放り出される。それが少し悔しい。

 だから、あきらめないの。

 律子の笑顔、もっと見てみたいから。


「えーと。律子、さん」
「何?」
「どうして千早さんには呼び捨てを許していて、美希には呼び捨てさせてくれないの?」
「そりゃアンタ、年上に対する礼儀というものがあるでしょうに」
「んー。その理屈だと、千早さんにも呼び捨てさせちゃいけないと思うな」
「また屁理屈を…」
「もっと、ちゃんとした理由が聞きたいな」

ね?と私は律子に迫る。すると、律子は私の動きに合わせて、少しのけ反った。

「…あー」
ぽりぽりと頭の後ろをかく律子。少し所在なさげな感じで。

「アンタが千早を『さん付け』で呼ぶのに、私を呼び捨てで呼ぼうとするのと同じ理由よ」
「ミキは律子さんのこと、尊敬してるよ?ちょっと小言が多いかなって思うけど」
「尊敬してくれているなんて初耳だわ。そしてアンタもアンタで一言多いって思うけどね」
「むー」


「少し、違うような気がする」
「何が違うのよ」
「うーん。何となく、そう思ったの」

自分でもよく分からないが、これでも律子のことは尊敬している。
だから、その理屈でいえば、律子のことを「さん」付けで呼ぶのは自然な話なのだ。

 だけど、違う。

律子は「律子」と呼びたい。「律子さん」ではダメなのだ。
良く分からないけれど、ダメなのだ。

律子に抱く尊敬の念と、千早に抱く尊敬の念は、似ているようで、少し違う気がする。
うーんと私は頭を抱えて考える。それを見た律子は笑う。

「まぁ。アンタが違うっていうんだから、違うんでしょうね。どこかが」

そう言って、コーヒーの入ったマグカップを片手に、パソコンに向き合う律子。

 その姿が、どこかプロデューサーと重なる。
いつだって、厳しくて、どこか優しくて。気付かないところでいつも助けてくれる存在。



 あぁ、そうだ。そういうことなのだ。

   きっと、きっと、そういうことなのだ。


「ちょっと分かってきたかもしれない」
「ふぅん。それは良かったわね」

相変わらずパソコンで作業を続ける律子は、コーヒーに口をつけながらそう美希のつぶやきに答えた。
自分が律子に抱く感情が何なのか、その表情はぼんやりとしているが、
その輪郭だけはハッキリと分かったような気がする。
それが少し嬉しくて、私は考え出した結論を口にした。自然とこぼれる言葉。




          「律子は、ミキの、ハニーなんだ」




 ぶおっふぉっ!




美希が言葉を口にする直前にコーヒーを飲んでいた律子は、美希の言葉に思わずコーヒーを噴き出してしまった。
気管にコーヒーが入って、むせる律子。それを見た美希は不思議そうな顔をする。

「…律子、何やってるの?汚いよ?」

げほげほとせき込む律子に、鞄からハンカチを渡す。
「ありがと」と言いながら、律子はパソコンのディスプレイをハンカチで拭く。

大体拭き終った後、律子は怪訝そうな顔で美希を見る。

「アンタねぇ…」
そう悪態をつきながらぼやく彼女の顔は真っ赤で、頭から湯気が出そうだな、と思った。
それがおかしくて私はつい笑ってしまった。

「あははっ。律子、顔真っ赤なの」
「そりゃ誰だってアンタみたいな女の子にそう言われればビックリもするわ」
「律子もびっくりするんだ」
「当たり前でしょう。私だって人の子なんだから」

律子は今までで一番大きなため息を、これでもかという位に吐き出した。

「あー、熱くなってきた。美希、ちょっと窓開けてきて」
「そんなに暑くないと思うけど?」
「い、い、か、ら、い、け !」
「律子、人使い荒いと嫌われるよ」
「うるさい。そして『さん』をつけなさい『さん』を」
「はぁい」

そう言って私は窓を開けに席を立った。
ふいに後ろを振り返ると、律子は額ににじんだ汗をさっきのハンカチで拭っていた。



 ねぇ、律子。




 それ、コーヒー拭いたやつだから、顔汚れるよ。




              だけど、ハニーのそういうところ、好きだよ。









おしまい。
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by 6showU | 2009-10-10 10:30 | SS


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